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戦争と人間

第一部197分、第二部179分、第三部187分、各映画に休憩が入り、合計563分(9時間半以上)以上にも及ぶ、五味川純平原作の大長編映画

膨大な登場人物が登場するため、一々登場人物名のテロップが入るが、歴史に疎いと、誰が実在の人物で、誰が架空の人物なのかの区別すらつきにくい。

戦争に向かって行く暗い時代と、それを利用して拡大しようと企む伍代家の兄弟、親子を中心に話は進む。

第一部を観る限り、その中心人物として描かれているのは、芦田伸介演ずる伍代喬介のように思える。

軍部を動かし、戦争を起こしてまでも商売を貫こうとする恐ろしい男として描かれている。

いつも、日本刀を忍ばした仕込み杖を持ち歩いている所なども、ただ者ではないと言う印象を受ける。

又その周囲には、三國連太郎演ずる、人殺しもいとわない謎の無頼漢鴫田やナイフ投げの名人雷太、身体を使って情報を集める謎の女情報員鴻珊子などと言う恐ろしい人間達が集まっている。

一方、そうした非道さを冷静に見つめる人物として、高橋幸治演じる高畠正典なるインテリが配されている。

東京の伍代家の面々も個性的で、奔放なお嬢様タイプの由紀子、傲慢で考えが浅い長男英介、金持ちの生活に疑問を持ち始める俊介などそれぞれをめぐるドラマが展開して行く。

第一話で注目すべきは、その俊介を演じているのが、若い頃の中村勘三郎(現:十八代目中村勘三郎)であること。

まだ中学生くらいかと思われるが、さすがにしっかりした芝居をしている。

日活作品なので、石原裕次郎、二谷英明、高橋英樹、浅丘ルリ子、井上昭文、藤岡重慶、大滝秀治…と言った馴染みの役者達も出演しているが、俳優座など外部の協力陣も多い。

ちなみに、石原裕次郎と二谷英明の出演は、この第一部だけである。

あまりにも大長編過ぎることや、ダイニチと言う弱小配給会社だったこともあってか、あまり観る機会がない作品ではないかと思うが、さすがに見応えのある力作になっている。

列車が走るシーンや戦闘シーンの一部はミニチュア特撮で、特撮美術を担当しているのは、ウルトラシリーズなどでもお馴染みの成田亨氏である。

 

 

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1970年、日活、五味川純平原作、山田信夫脚本、山本薩夫監督作品。

昭和3年1月

陸軍士官学校

教官が居並ぶ新人達を前に、地図を示しながら満蒙の解説をしていた。

満蒙は、我が日本帝国の命の生命線である。

そこには広大で肥沃な農地や鉱物資源がある。

ここを開発すれば、貧しい農家の娘が苦界に身を沈めると言うこともなくなる。

満蒙は日清日露の戦役で、その権益を日本が手に入れた土地である。

しかし、今、馬賊上がりの張作霖が日本の権益を圧迫しようとしている。

一教官の意見だが、日本国民は皆同じ気持ちだと思う。

今こそ、断固、張作霖らに対し、鉄槌を下すのもそう遠くない…

長春郊外

赤ん坊を往診していたのは、日本人医師不破学(田村高廣)だった。

不破は、診察後、父親が差し出した酒を旨そうに飲み始め、母が差し出した食料は、心配せんで良いよと断る。

タイトル

その直後、紅槍匪が村を襲って来たので、父親は不破を納屋の藁の中に隠すが、乱入してきた匪族たちは、アヘンを出せと、別の家の主人に迫り、そんなものはないと断るとその場で惨殺し、奥に母親が隠していた娘を連れ出すと、家には火をつけ、家畜の豚なども奪って去って行く。

納屋から出てきた不破は、一瞬のうちに壊滅した村を観て愕然とする。

馬車に乗せてもらい自宅に帰る途中、御者をしてくれた男は、あの馬賊達は、貧乏人は襲わないと言い、今、自分の息子は張作霖の護衛をしている。蒋介石が北京に攻めて来ても負けないと自慢する。

伍代公司の用心棒鴨田駒次郎(三國連太郎)が、一人、支那街の中のロシア人の住まいに侵入すると、裸の女がベッドの上で悲鳴を上げる。

それに一瞬眼を奪われた鴨田は、入口の影に隠れていたロシア人に銃を突きつけられてしまう。

しかし、瞬時にその銃を奪いロシア男を射殺すると、裸のロシア女にアヘンはどこだと聞き、女は知らないと答えるが、その身体の下に隠してあった包みを見つけ出す。

家に向かっていた馬車の御者は不破に、伍代公司の旦那を知っているかと聞く。

日本の兵隊を自在に使うそうだと言う。

不破を降ろし伍代公司に到着したその御者は、中国人白氷祥(山本學)に何か紙切れを手渡す。

荷馬車屋をしている伍代公司の中では、伍代喬介(芦田伸介)から依頼された新しい販路を作れと言う仕事を、部下の高畠正典(高橋幸治)が、支那語が出来ない自分には向いていないと断っていた。

さらに、人を殺して、アヘンを奪い返して来るようなことも出来ないし…と、今社長室に戻って来た鴨田駒次郎を皮肉りながら答える。

伍代喬介は、鴨田駒次郎には別な仕事をやってもらう。狼には狼の仕事があると伝える。

旅順

蒋介石の動きを情報員荒木五郎(井上昭文)が村岡関東軍司令官(小山源喜)や高級参謀河本大作大佐に伝えていた。

そんな司令室に伍代喬介がやって来て、蒋介石の北伐作戦について質問する。

なかなか動こうとしない関東軍にいら立っていた伍代喬介は、奉勅命令が出たらどうだと問いつめ、村岡関東軍司令官はそうなったら、完膚なきまでに蒋介石を叩きのめすと言い切る。

東京 3月

伍代産業株式会社小松川電機工場

標拓郎(伊藤孝雄)は同居し、組合活動をしている仲間の山川と、最近、会社が満州に進出し、景気が良くなると言う噂がある。伍代産業は大正時代に伸びた新しい新興の会社は、外地に出て伸びたがる。今の田中義一内閣では治安維持法を成立させるらしい。満州侵略への前触れだ。工場では気をつけろなどと言う情報を交換し合う。

下宿に帰ると、弟の標耕平(吉田次昭)が寝ていた。

標拓郎、耕平兄弟は両親を早く亡くし、二人だけで生きていたのだった。

深夜、小便に起きた耕平は、玄関を破って入ってきた特高達に気づき、兄達に逃げるよう伝える。

特高は部屋に乱入してきて拓郎を押さえようとするが、耕平は、特高が立っていた布団を引っ張り邪魔をすると、拓郎は窓から下に飛び降りるが、周囲にも張っていた特高らにあっさり捕まってしまう。

3月15日

全国の組合関係者の大量検挙が行われた。

315事件と言う。

伍代家の屋敷ではパーティが行われており、矢次憔夫(二谷英明)とその妻、僚子(三条泰子)が、憔夫の部下の弟と言うこともあり引き取った耕平を伴ってやって来る。

その日のパーティは、アメリカに行く矢次憔夫のお供として付いて行く当主伍代由介(滝沢修)の長男、英介(高橋悦史)の歓送会であり、長女由紀子(浅丘ルリ子)がピアノを奏でる中、金融家の市来善兵衛(清水将夫)や陸軍参謀本部の佐川少佐(青木義朗)、柘植進太郎中尉(高橋英樹)なども出席していた。

耕平は、まだ小学生の末っ子順子(佐藤萬理)が庭に連れ出す。

由紀子は柘植と懇談していた。

由紀子は柘植に、あなたは伍代家の裕福な暮らしを憎んでいるんでしょう?もし戦争になって、私が儲かったら斬ります?と聞き、柘植中尉も斬るかもしれませんと答える。

伍代喬介の考えに感化されていた英介は佐川少佐に、まだ奉勅命令は出ないか?などと確認していたが、その会話を聞いていた、次男の俊介(中村勘九郎=現十八代目中村勘三郎)が叔父さんの考えは少し変だと思うと口を出すが、そんな俊夫のことを喬介は柔弱だ。そんなことではアカに利用されると嘲る。

矢次が俊介に、耕平の相手をしてやってくれと頼むと、客の一人があの子の兄はアカだそうだね?と嘲笑気味に聞き、英介は、叔父が俊介の自由主義的な考え方を注意しているのに出過ぎた真似をするなと矢次を叱りつける。

由紀子は矢次を自室に呼び、俊介は耕平を自室に招き入れる。

耕平は、油絵を描くのが趣味らしい俊介の生活に驚くと共に、君、アカ嫌いかい?悪いと思うかい?と尋ねる。

俊介は、良く分からないが、新聞には悪いと書いてあると答えると、新聞は金持ちが金を出しているからだし、君は金持ちの坊ちゃんだから分からないんだと耕平は言う。

俊介は、坊ちゃんだなんて言うな!と機嫌を悪くする。

その頃、由紀子は矢次に、あなたはまだ払い渋っているものがあるんじゃなくて?勇気よと迫っていた。

ドアの外に人の気配を感じた由紀子が開けてみると、そこには父親の秘書の武居弘通(波多野憲)が立っていた。

どうやら二人の会話を盗み聞きしていたらしい。

矢次は、私は勇敢でも正直でもありません。いけませんか?と言いながらも由紀子に迫り、二人はキスをする。

由紀子はそんな矢次に、あなたは自分からは何も御出来になれない。人から与えられるまで待っているのは卑怯よと言いながら、真樹と言う男に電話をかけ呼び出し、呼べばすぐにでも来る男が自分にはいることを見せつける。

一方、一階の電話に出ていた柘植中尉は、佐川少佐に電話の内容を伝え、佐川少佐は伍代親子らに、国伐軍と日本が危険な状態になったと知らせる。

それを聞いた伍代由介は、蒋介石のことですから、へまはやらないでしょうと答える。

その頃、北伐軍の第一路に当たる済南に40kmの街では戒厳令が敷かれていた。

日本陸軍第6師団

鴨田駒次郎は中国人劉(大滝秀治)に、北伐軍のお偉方にコネを付けてもらいたいことと、伍代の通関での物資を黙認して欲しいと頼み込んでいた。

将軍は女か?金か?アヘンか?何が欲しいか確かめて欲しいと頼み込んでいた。

東京の伍代家では、喬介が部屋に来ていた長年女中頭をしているお滝(水戸光子)に、最近、兄に抱かれていないな?おぬしも可哀想な女だ。長年仕えても妻にはなれず…と同情し、俺に抱かれてみないか?と誘っていた。

お滝は相手にせず、今のままで満足ですと答え部屋を出て行く。

劉は、そんなことをすれば、中国と日本が…と言葉を飲み込む。

戦争になるか?と笑いながら顔に炭を塗っていた鴫田は、劉の召使いの青年にも付いて来るのか、来ないのか?と迫っていた。

青年はしばし迷ったあげく、鴫田と同じように顔に炭を塗る。

鴫田と青年は、日本人の家に忍び込むと、女を襲撃し、青年に抱かせる。

やったら殺すんだぞと支持をした鴫田は、街に入ってきた北伐軍の兵隊達に、日本人の女がいるぞと中国人を装い、家の中に招き入れる。

昭和3年5月3日 済南事件と言う。

しかし、日本軍とぶつかるつもりがなかった蒋介石は、街を迂回して北京に向かった。

伊通地方にある伍代公司伊通営業所

そこには、喬介の指示で、通訳の白永祥を伴ってやって来た高畠正典がいた。

匪族には、自分と同じ貧しい農民の血が流れている。

道が出来たら、物資が動くので農民は助かる。しかしやがてその道は、軍事目的に使われるようになるでしょうと白は高畠に話をしていた。

その直後、想像通り匪族が営業所を襲撃したので、高畠は、お前達の大頭目に会って商売の話をしたい。私は商売人だ。お前達にも金が儲かると説得し、猿ぐつわをされて白と共に荷車に乗せられ、彼らの陣地へ連れて行かれる。

大頭目(丹波哲郎)に対面した高畠は、自分たちは銃や弾薬は手に入らない。食料や衣類、雑貨と言ったものだと高畠は説明する。

さらに、一艘につき16元、計800元の保険料を掛けて川でジャンク運送して成功している例も話す。

このやり方が巧くいっているのは住民を困らせないからだとも。

しかし、大頭目は、荷馬車に乗っている奴が銃を持っていたり、密偵が乗っていたらどうする?と聞いて来る。

商業用の道を作っても、日本人に軍事利用される危険性を言っているのだった。

高畠は、もしそんなことがあったら、自分を殺して良いと言い切る。

その頃、五代喬介は、レストランで中国の女スパイ鴻珊子(岸田今日子)と会っていた。

珊子は喬介に、満州、ハルビンの土地を買っているでしょう?と聞き、喬介の方は逆に、蒋介石はどこまでやるつもりなんだ?と珊子に探りを入れる。

関東軍が山海関に出るかどうか?奉勅命令が出るのかどうか?互いに腹の探り合いはつづく。

喬介は、出なきゃ、出させるまでさとうそぶき、ホテルに部屋がとってある。一汗かかんか?と珊子を誘う。

二人はかねてより、男女の仲でもあったのだ。

そんな喬介の元に、奉天総領事館事務員篠崎浮火書記官(石原裕次郎)が訪ねて来る。

篠崎書記官は、高畠の妻、素子(松原智恵子)に頼まれ、音信不通となっている高畠に会うことだったようだ。

喬介は伊通から戻るはずですがと教えるが、素子は自分で探しに行くので、誰か詳しい人を付けてくれと言う。

篠崎書記官は、喬介が軍と組み、外交を無視した動きをしていると注意する。

しかし、喬介の方は、あんたらに任せておくと、満州の夜明けは来んよと嘲笑する。

篠崎書記官は、あんた達のやり方では満州に血で染まりはしないか?と反論する。

素子が宿に戻ると、そこに高畠が戻っていることに気づく。

ベッド脇のテーブルに小さな硬貨のようなものが置いてあり、それが江蘇省の通行証なのだとベッドの上の高畑は説明する。

素子は、明日高畠を探しに行くつもりだったし、自分は一人ぽっちなので、あなたの側にいなければ生きて行く所がないと高畠にすがりつく。

東京、小菅刑務所

兄、標拓郎に面会に来た耕平は、失次のおばさんと喧嘩をして家を出たと報告していた。

拓郎は咳き込んでいたが、女の人が自分を訪ねて来なかったかと聞き、もうすぐ出られるので頑張れと公平に伝える。

ある日、耕平は伍代俊介を連れて、プロレタリア画家の灰山浩一(江原真二郎)の下宿先を訪ねていた。

俊介は、今まで観たことがなかった貧しいものたちのどん底の姿を絵の中に発見し、すっかり虜になってしまう。

そこに雑誌「改造」を片手にふらりと現れたのは、小説家の陣内志郎(南原宏治)だった。

陣内は、俊介が伍代家の息子だと知ると、兵隊が屋敷に来るか?満州をどうするか話しているか?などと聞き、資本家は同じだ。労働者から搾り取るだけだが、今に、伍代産業でもストライキが始まり、労働者達は一斉蜂起するので、君に姉さんでもいたら、裸にされて、町中引きずり回されるだろうと悪態をつき始める。

灰や間は、そんな陣内を注意し、部屋から追い出すが、俊介には、ここでのことは誰にも話しちゃいけないと口止めする。

しかし、家に帰った俊介は、父の伍代由介に、貧しいおばあさんの絵を見つけたので家で買ってくれないかと頼む。

伍代由介は、若いうちは一つの考えに捕われると他の面を観なくなる。貧乏するには理由がある。国が貧乏と言うことだ。豊かになるには力が必要であり、貧乏に泣くことではない。日本に貧乏をなくすことだと語りかける。

その頃、伍代由紀子は柘植進太郎中尉と二人きりで会い、中央の命令に背いたらどうなります?と聞き、今、あなたが関東軍司令官になったとするとどう動きます?奉勅命令は出ませんのよと問いかける。

柘植中尉は、山海関まで移動しますと答える。

東洋柘植ビル

奉勅命令は来なかった。

伍代喬介は暗号電報を受け、5月22日、旅順の関東軍司令部と主力部隊は、奉天へ移動したと知る。

河本大佐の独断専行による錦州出撃計画だった。

喬介は高畠から電話が入ったので、すぐに馬やロバなど輸送できるものを集めて奉天へ送れと命じる。

東京でも、伍代由介に秘書の武居が、奉勅はまだのようだと連絡していた。

佐川少佐は、関東軍は動かんだろうと読んでいたが、その読み通り、奉勅命令は最後まで出されなかった。

河本大佐の元へやって来た伍代喬介は、張作霖はここへ戻って来る。錦州出撃計画はどうなった?と詰め寄るが、河本大佐は、まだ打つ手はあるさとつぶやく。

喬介は、机の上に置かれた地図に、○印が付けられていることに気づく。

満鉄と京奉線の交差する皇姑屯

奉天へ4kmの地点

諜報員荒木五郎の元にやって来た河本大佐は、張作霖が列車の前から4両目に乗っているとの情報を聞く。

その頃、奉天まで420kmの山海関付近を張作霖(落合義雄)らが乗った列車は進んでいた。

奉天医大講師服部達夫医師(加藤剛)は、不破を、美人の妹がいる知人の中国人に紹介する為、一緒にその家に向かいながら、自分は満人の女と結婚するだろうと話していた。

不破は、俺たち満州の二世は何人になるんだろう?とつぶやいていた。

そんな二人に突然、「この辺をうろつかん方が良い。場内から出ないようにと話しかけてかけて来たのは鴨田駒次郎だった。

見覚えのない日本人に声をかけられた服部は警戒し、今の男は特務機関か?何かやる気だ…自分たち日本人を怒らせる気だと不破に話しかけながら馬車に乗り込む。

鴨田はその後、遊郭で女を抱こうとしていたが、そこに社長から連絡があったと店の主人が顔を出し、計画変更になった。軍が何かをやるらしいと鴨田に伝言する。

それを聞いた鴨田は自らズボンを脱ぐと、遊女を裸にして布団に押し倒す。

錦州付近、皇姑屯へ220km付近を列車は突き進んでいた。

服部と不破は、医大の助手をやっている中国人趙延年(岩崎信忠)と、その美人の妹趙瑞芳(栗原小巻)と共に、趙家で麻雀を楽しんでいた。

延年は、妹の瑞芳は日本に留学した方が良い。反日派になるからと皮肉を言っていた。

そこに、延年と瑞芳の父で富豪の趙大福(竜岡晋)が挨拶に来て、これから翌朝駅に到着する張作霖大元帥を迎えに言って来ると言う。

こんな夜中のうちから行くのかと怪訝に感じた日本人二人に、瑞芳は、駅の側に、父の第三夫人の家があるのだといたずらっ子っぽく教える。

服部は、日本人と結婚したいと言う瑞芳に、どうかね?僕は?と冗談めかして売り込む。

皇姑屯近く

草むらに身を潜めていた東宮大佐ら関東軍は、近づいてきた列車が交差する鉄橋の下を通過した時、橋を爆破する。

この事件を聞いた関東軍は、すぐさま総領事館に駆けつけると、自分たちが街を守ると進言するが、出迎えた篠崎書記生は、すでに警察を派遣したので、総領事は軍を必要としていないと説明する。

林総領事はどこにいる?と詰め寄る関東軍に対し、篠崎書記生は、警察力だけで治安維持を守れるし、林総領事も自分と同じ考えですと答え、相手を立腹させる。

趙延年は、やりましたね。張作霖の列車が爆破されたと報告し、それを聞いた服部は、日本人はそんなことはしない。やるなら堂々とやるよと答えたので、あなたは日本人でしたね?と延年は苦笑する。

嶋田から事件を聞いた五代喬介は、へまをやりやがって!殺しただけでどうなる?と、河本大佐の計画の甘さを指摘しながらも、東京へウナ電を打たせる。

昭和3年12月

東京の伍代家に戻った五代喬介は、金融家の市来善兵衛が、アメリカでは今回の爆破事件は関東軍がやったと言っていると話しているのを聞きながら、由紀子に、満州に来て一役買ってくれないかと勧めていた。

昭和3年12月29日

張学良は、蒋介石の国民政府に合流した。

………………………………… 休憩 …………………………………

昭和5年1月 長春

服部医師は、独り身の不破の家で正月気分を味わっていた。

その時、玄関のベルが鳴ったので、急患かと思い不破が出てみると、ナイフを持った男が診てくれと迫る。

除在林(地井武男)と言う朝鮮人のようだった。

どうやら左手に怪我をしているようだった。

不破と服部は早速手当をしてやるが、除在林は食うものと金を貸してくれと要求する。

これから関東に言ってでかい仕事をする。自分は挑戦で食えなくなって満州に来たら、満州人から搾り取られたと言う。

その時、雪の上に落ちていた血の痕をたどって梅谷庄吉巡査(山田禅二)と大塩巡査(福山象三)が不破医院の玄関ベルを押す。

不破が玄関に出ると、留置所を破って逃げ出した男がいると言う。

その警官が家の中に入り込もうとしたとき、除在林は梅谷巡査を刺すと、裏窓から外へ逃げる。

駅で警官数名ともみ合った末、除在林は雪の平原に逃げ去って行く。

除在林に刺された梅谷巡査は殉職し、まだ幼い一人娘の邦(廣田治美)は父の遺体を前に泣きじゃくる。

一緒にその場にいた大塩巡査の息子大塩雷太(福崎和宏)は、朝鮮人を叩き殺してやる!と復讐を誓うのだった。

梅谷邦は、伍代公司で働く白永祥と仲良しだった。

白は邦に昔話を聞かせてやる。

昔、旅順と大連と言う双子の息子を持っていたおばあさんが泣いていた。

双子は悪い連中にさらわれ、25年で返すと言う約束だったのに、その内99年経ったら返すと言う話にすり替わってしまったからです…と言う。

そのお話の結末は?と邦から聞かれた白は、誰にもその結末は分かりません。まだ99年経ってないからですと答える。

伍代公司にやって来た関東軍高級参謀石原莞爾中佐(山内明)は高畠に、匪族に通行税を払って通っているだろうと詰問し、それは間接的通費行為になると責める。

高畠は黙ってその場で通行証を差し出し、自分がやっていることが通費行為なのなら、もっと良い方法を教えて下さいと反論する。

そうした会話を横で聞いていた五代喬介は石原中佐に、中国共産党は、台湾や朝鮮の共産主義者田tに暴動を指示したらしいと伝えながら、高畠には2、3日休暇を取るよう勧める。

高畠が社長室を出て行くと、石原中佐は、あの男が開拓した道を利用できんか?と喬介に聞く。

喬介は、その保証の用意は軍にあるんでしょうな?と抜け目なく聞き返すのだった。

高畠は久しぶりに妻の素子と共に街を散策していた。

盲目の女性歌手が町中で歌を歌っていたので、金を渡す。

間島地方では、除在林らが首謀して放火、暴動を起こしていた。

昭和5年5月30日、在満朝鮮人や台湾人の不満分子は暴動を起こす。

この事件で殺傷、検挙されたものは190名。間島暴動であった。

この時、逃亡していた除在林は、通りかかった高畠の馬車を奪う。

白永祥は、夫が人質にされた高畠素子を間島に連れて来る。

白を待っていたのは、李と言う男だった。

除在林は、中国共産党の連中から高畠を返すように言われ激怒していた。

そもそも、今回の暴動を指示したのは中国共産党だったからだ。

日本人に恨みを持つ除在林は、縛られていた高畠を殴りつけるが、結局、白が馬車に乗せアジトから連れて行く。

途中で待ち受けていた素子が馬車に駆け寄り、夫にすがりながら、もう辞めましょう、こんな仕事…と訴える。

東京のおでんの屋台では、飲んだくれたオヤジが、満州さえ手に入ればな…と管を巻いていた。

その店でおでんを食べていたのは、伍代俊介と標耕平だった。

修介は、兄の英介が甲種合格で満州へ行くのだと話していた。

親父の力で、兄は兵隊にならずにすんだのだと言う。

それを聞いた耕平は、釈放された自分の兄標拓郎が、そのまま兵隊に取られていたこともあり、金持ちは何でも出来るんだと憤慨する。

仙台第三師団

夜、標拓郎は、16の妹が身売りされたと泣いている新兵の隣で寝ていた。

伍代産業でも、電機工場の労働者達のストライキが始まる。

偶然、工場の前を通りかかった伍代俊介は、落ちていたアジびらを拾うが、やがて駆けつけてきた警官隊が、工場内に放水を始め、ストライキの従業員達を次々に逮捕して行く様子を目の当たりにする。

入口の鉄柵に捕まり、俊介は「やめてくれぇ!」と叫ぶ。

その頃、伍代家では、企画部長の矢次憔夫が五代由介に、労働者達の賃金を上げてやった方が効率が良くなるのでは?と進言し、ひょっとして満州進出の意図があるのか?と問いただしていた。

その場にいた英介は、うちは電機部門だけではないとうそぶき、由介は、争議を起こす気なら官憲使って弾圧すると冷たく言い放つ。

そこに帰って来た俊介は、工場でストライキが弾圧されているのを今見てきました。僕はお父さんを軽蔑しますと言う。

その言葉を聞いていた由紀子は、うちから人道主義者が1人くらい出ても良いわねとつぶやく。

自室に戻った俊介はベッドで泣きじゃくり、慰めに来たお滝も泣きながら、男は心がきれいなだけじゃダメなんです。お金持ちは貧乏人の味方には絶対になりませんと言い聞かせるのだった。

五代喬介と共にホテルにいた鴻珊子は、満州に来たばかりの伍代英介が、ロビーで趙延年、服部医師と共に談笑していた瑞芳に眼をつけたのを察し、あれは大福餅こと、地元の大地主趙大福の娘よと教える。

一方、服部医師の方は、英介や喬介の姿に気づくと、戦争を食い物にしている死の商人だと趙兄妹に教える。

英介は、そんな瑞芳たちのテーブルに近づいて来ると、自己紹介して一方的同席する。

珊子とビリヤードを始めた五代喬介は、あいつも女には強引だな…と呆れながら、帳学良はともかく、関東軍の情報を蒋介石に流すと命を狙われるぞと珊子に注意する。

やがて、服部や趙兄妹はホテルを去り、五代喬介も一人歌いながら帰路についていたが、そんな喬介に身を寄せて来た外国人がいた。

先ほど、ビリヤードをしていた喬介を監視していたロシア人らしき男だった。

さらに別のロシア人も近づいてきたので、喬介は、張学良か?南京政府か?と男の背後関係を聞くが、もちろん二人と答えない。

その時、馬車で近づいてきた鴫田駒次郎が一人を射殺、喬介も仕込み杖の日本刀を抜いて、もう一人をその場で斬り捨てる。

満州財閥か?それとも関東軍?…、自分の命を狙った相手を考えていた喬介だったが、支那街で日本人が襲撃されれば、出兵の良い口実になると読む。

昭和5年10月26日

台湾中部、霧社で山地部族が蜂起、日本軍がそれを鎮圧して600余名の死者が出ると言う霧社事件が起きる。

12月14日には、浜口首相が東京駅で右翼に襲撃され倒れる。

そんなある日、伍代家を訪れた柘植中尉は、ちょうど出かけようとしていた由介に、霧社事件の調査のため台湾に行く事になったと伝える。

由紀子と共に、台湾関係の本を探すため由介の書庫に案内された柘植中尉は、満人は首を斬るそうです。出草と言います。それを女達は恍惚として観るそうですと言いながら、書庫の中で由紀子を抱き、熱い口づけを交わすのだった。

昭和6年4月

高畠が開拓した輸送路を進む荷馬車の列を山の上から監視していた匪族たちは、6番目の馬車に妙な奴がいると気づき、襲撃をする。

特務機関の人間が乗っていたのだった。

その頃、高畠と通訳係の白永祥は、赤ん坊を代田素子に見送られ、馬車で伍代公司伊通営業所から仕事に出かけていた。

その直後、営業所を襲った匪族は、素子を誘拐すると、営業所に火を放つ。

仕事から戻って来た高畠は、営業所が焼け残っているのを発見、驚くが、生き残っていた女の証言から、妻の素子が匪族にさらわれたと知る。

この事件を嶋田駒次郎から伝え聞いた五代喬介は、何か手違いが生じたんだろうとつぶやき、鴫田に現地に行ってくれないかと頼むが、鴫田は、自分が行くと高くつきますよとうそぶく。

その時、当の高畠が戻って来て、金と銃を貸してくれと喬介に頼む。

事件の原因は、長州から来た車に特務機関が乗っていたので、規約違反だと匪族が判断した為で、素子は自分の身代わりに連れ去られたのだと言う。

それを聞いていた鴫田は、無駄だろうね。死ぬ気かね?と高畠を嘲笑するが、高畠は、素子が生きてさえいれば…と言い返す。

その後、高畠と白氷祥は、匪族の大頭目に会うが、素子は共産匪が連れて行ったと言う。

さらに、目隠しをされた二人は、その共産匪に会いに行くが、待ち受けていたのは徐在林で、素子はもう自殺して、あの山の麓に埋めたと言う。

徐在林は、俺たちが何をやりたいのか知りたければ、軍を連れて来い。自分の親父や兄貴達は、みんな日本人に野良犬のように駆り出されたあげく、丸太ん棒に吊るされたと言う。

大正8年3月1日に起きた「万才事件」の犠牲者だったのだ。

徐在林らは一斉に朝鮮の歌を歌い始めたので、妻の死骸を探したいと言う高畠を、白は説き伏せて帰ることにする。

東京では、兵隊になった標拓郎が久々に弟の耕平と灰山と遊覧船に乗って、つかの間の休日を楽しんでいた。

拓郎は、山川は獄死し、自分は灰山に教えてもらった「工場のあいつ」のような人間にはなれなかったと打ち明ける。

夜、久々に兄弟そろって布団に入った耕平は、あの女の人、結婚していたよと拓郎に伝える。

拓郎は、これからは誰も信じるなよ。女も思想も。今後、お前の上に立つ人がいたら、その人がどんな人間か良く見ろ。自分が納得出来ないうちは何もするなと教え、泣き出した耕平とちょっと組み合ってやるが、そんな拓郎に抱きついた耕平は、俊介君の兄さんは兵隊に取られないんだと、世の中の理不尽さを嘆くのだった。

昭和6年6月6日

中村震太郎中尉と予備役井杉延太郎曹長は、兵要地誌実施調査のため、ロシア人と蒙古人を案内につけ、イレクテを出発する。

関東軍司令部

7月6日から10日間、関東軍司令部板垣征四郎大佐、石原参謀は、幕僚と共に、対ソ作戦終末点研究のため、ソ満国境を視察

その後、中村中尉と井杉早朝が、支那官憲に不法逮捕され、銃殺された後、遺体を山に埋めたと言う無線連絡が飛ぶ。

伍代由介は、満州に大きな事変が起こると感じていた。

そこに、お滝が、柘植中尉が来たと知らせに来る。

応対に出た由紀子に、柘植は金沢に転勤になった。どうやら、霧社事件の報告書で、植民地対策への批判を書いたせいらしいと伝えに来たのだった。

その話を背後で聞いていた秘書の武居弘通が、帰って行った柘植を送って行かれたら?と由紀子に勧めるが、由紀子は出過ぎた真似をする武居の頬を叩く。

関東軍の本部では、満州青年連盟のメンバー達が石原中佐の弱腰姿勢を責めていた。

石原中佐は、関東軍は微力、軍刀は竹光と言われたが、いざことあれば、奉天撃滅は2日とかからん。一瞬のうちに決すると言い放つ。

伍代喬介と鴻珊子は一緒に風呂に入っていたが、その様子を窓の隙間からのぞいていたのは、伍代喬介が使用人として雇い、今は風呂炊きを仰せつかっていた大塩雷太だった。

珊子は、立川第一公使が、関東軍を止めに来るはずよと情報を教えていた。

昭和6年9月18日 午後10時20分頃

奉天郊外 柳條溝付近

今田大佐率いる関東軍は、迫り来る列車を前に線路を爆破、連射は転覆する。

その事件を電話で報告される板垣征四郎大佐(藤岡重慶)

伍代喬介は、深夜、旅館でその知らせを受けるが、雷太は面白くなさそうにナイフを投げてみせる。

そんな雷太に、これから夜道に出て行く勇気あるか?高畠の家で公司の支那人を集めろ。逃げ出す奴がいたら、お前の得意な技を使って良いと喬介は命じる。

板垣大佐ら関東軍は総領事館に押し寄せると、満鉄が破壊されたんだと興奮しながら篠崎書記官に詰め寄っていた。

しかし、日本刀を突きつけられながらも、篠崎書記官は、命令なくして戦闘開始すれば死刑にすると言う法律を盾に動こうとはしなかった。

そんな篠崎書記官を連れ出そうとする総領事に、今歴史が動こうとしています。我々が逃げ出してしまっては外交官の存在を失いますと力説するが、関東軍の圧力の前にはそれ以上あらがうことは出来なかった。

電話でその後の連絡を受けた板垣大佐は、占領せよと命じる。

長春 南嶺砲兵営

標拓郎は、進軍していたが、建物からの機銃掃射の前には身動きができなかった。

その時、妹が身売りをしたと話した男が、早駈けで建物に近づくから援護してくれと声をかける。

拓郎は、走り出した同僚を援護する。

同僚は建物にたどり着くが、それを確認し、喜んだ瞬間、拓郎は銃弾に頭を抜かれ死亡する。

同僚は、手榴弾を投じ、機銃掃射を止めさせる。

その後、東京で、雨の中、新聞配りのバイトをしていた耕平が下宿に戻ると、俊介が待っていた。

俊介は、先に上がり込んで読んでしまった紙片を耕平に手渡す。

兄、拓郎の死亡通知だった。

耕平は、馬鹿だな…、死んじゃって…と泣きじゃくる。

ホテルで服部医師と会っていた趙延年は、張作霖の時から、日本、研究しましたね。先生、どう思います?と問いかけていた。

そんなテーブルに近づいてきて因縁をつけてきたのは、日本の満州浪人だった。

しかし、それを止めに入った伍代英介の名前を聞くと、満州浪人はそそくさと姿を消す。

瑞芳は、英介を避けるかのように部屋に戻るが、その部屋に一人やって来た英介は、勝手に部屋の中に侵入すると、瑞芳に襲いかかる。

ホテルから趙延年と一緒に帰っていた服部医師は、胸騒ぎを感じホテルに戻る。

ホテルの部屋で陵辱された瑞芳は、今、ホテルの周囲は日本軍で一杯。私が騒げないことをあなたは知ってやった。最初にあなたと出会った時、奉天は占領されていなかった。あの時なら、私は許したかもしれませんと軽蔑する。

英介は、ここはもう日本だ!と大声を出す。

その時、ドアがノックされ、英介が開けると服部医師が立っており、帰る英介に向かって、貴様のような奴は日本人の恥だと叫ぶ。

服部医師は、自分の下宿に来ないか?僕に君を守らせて欲しいんだと瑞芳に話しかけるが、瑞芳は、私、ここにいます。辱める日本人いるの構いません。恥ずかしいのは私じゃない。日本人ですと静かに答えるのだった。

服部医師は、今夜こそ、軍人だったらと思ったことはないと悔やむ服部医師だったが、一人にしてくれと頼む瑞芳の言葉を受け入れるしかなかった。

ことを知った五代喬介は英介を殴りつけ、時を考えろ!敵は日本人が隙を見せるのを狙っているのを知らんのか?大福がその気になれば、おまえなんか一晩で消せるんだと叱りつける。

それを横で聞いていた雷太は、やってみろ!と言いながら、又ナイフを投げるのだった。

喬介は英介に、19日の夜明け、この男に3人殺された。命惜しかったら良く覚えておくんだなと付け加える。

そして鴫田を呼んだ喬介は、英介を連れてハルビンへ行ってくれと頼む。

そうした会話を聞いていた高畠は、素子を殺した張本人はあなただと分かっています。何人殺せば気がすむんです?と喬介に告げる。

すると、鴫田は、何で伍代を辞めないんだと聞いて来る。

高畠は、最後まで見極めたいからですと答える。

高畠が去ると、ああ言う考え方も戦争の中で押しつぶされて行くだろうと喬介はつぶやく。

昭和6年10月24日

国際連盟理事会は満州撤兵勧告案を可決

11月18日 日本軍はチチハルを占領

昭和7年1月3日 日本軍は錦州を占領する。

昭和7年 桜田門事件

2月9日 結盟団、井上準之助全大蔵大臣暗殺

2月18日 第一次上海事変起こる

天皇、陸軍出兵を許可

金沢第九師団

戻って来た柘植中尉は、東京から伍代由紀子が来ていたことを知り驚く。

上海へはいつ?と聞く由紀子に、柘植中尉は一両日中には…と答える。

由紀子は、私、自分のことは自分で始末できましてよと告げる。

二人は、ベッドで抱き合っていた。

その後、帰る途中の由紀子は、売られて行く女達とすれ違う。

東京に戻って来た由紀子に、父、由介は、柘植君と結婚する気か?遊びか?と聞き、分からんな〜、軽率じゃなかったか?…と嘆息する。

由紀子は、私はきっと恵まれ過ぎているんだわ。私は打込むものが何もない。夢中になれるもの欲しいの、人にも仕事にも…。今はただ、夢中になってみようとしているだけ…と答える。

そこに、お滝が新聞を持って来る。

内容は戦争のことばかりで、肉弾三銃士の美談などが大きく報じられていた。

昭和7年3月 上海

関東軍による満州国陰謀が進められていた。

進撃する柘植中尉の前で大きな爆発が起きる。